中国と日本、言語文化差異
ある日、一人の日本人女子大生が愚痴をこぼしていた。日本に来たばかりの中国の男子留学生が、いつも彼女に「付きまとう」と言っていた。その「付きまとう」とは、男女の間のことなのか?あるいは文化の誤解なのか知りたいと思い、わけを聞かせてもらった。
彼女の説明では「お茶を飲みましょう」と誘われたが、「私は、お茶を飲みたくないです」とハッキリ答えたのに、彼は「それではコーヒーでも飲みましょうか」と、しつこく付きまとったと言う。
それを聞いてやはり文化的な誤解による「付きまとう」なのだと分かった。辞書を引けば「お茶」の意味は日本語も中国語も同じ「お茶」のことだ。日本語の中の「ocha wo nomini ikimasenka?」という文の中の漢字は「茶」である。中国語に直訳すれば「去渇茶吧」になるが、日本人は常に人をコーヒーコーナーへ誘う時にその言葉を使う。がしかし、そのとき必ずしもお茶を飲むとは限らない。
中国語の「茶館」は普通急須の大きさとか、お茶の葉っぱの種類を区分して提供している。日本には中国のような、お茶を飲む専門店は殆どないので、日本人のいう「お茶を飲む」店は「喫茶店」になる。日本語の中の「きっさてん」は漢字で「喫茶店」と表記するが、その店では通常お茶はメニューには無いのである。
日本の喫茶店へ行っても、紅茶以外に「茶」の字が付く飲み物は殆どない。みんな喫茶店でコーヒーとかジュースを飲んだりする。喫茶店でお茶を注文する人はおそらく一人もいないだろう。即ち日本語の「お茶を飲みにいきませんか」の中の「お茶」はいうまでもなく、コーヒーやジュースやミルクや紅茶などを指しているのである。
だから日本人が「お茶を飲みみたくない」と断れば「お茶」だけではなく、コーヒーやジュースなどの飲み物も飲まないことである。言外の意味は相手の誘いを断ることである。日本人なら「お茶を飲みたくない」と断りの言葉を聞いたら「あ、そうですか。では今度にしましょう。」と言い、「お茶を飲見たくないなら、コーヒーを飲みましょう」といったことは言わない。言えば「しつこく付きまとう人」だと思われてしまうのである。
中国人の立場から言えば「お茶を飲みたくないので、コーヒーを誘ったら、しつこく付きまとうと思われるのは、全くの誤解だと思う。中国ではお茶とコーヒーは全然違う飲み物なので、もし中国人が日本人を中国の茶店に誘ったとき、日本人がお茶ではなく「コーヒーを下さい」とか「ジュースを下さい」と言ったら、中国人はきっとびっくりするだろう。
中国の茶店のメニューはお茶だけである。中国では「お茶を飲みに行きませんか」という誘いに「行きましょう」と答えれば、次は烏井茶を飲むか、烏龍茶を飲むかの選択になる。お茶ならなんでもいいのである。逆に「お茶を飲みたくない」という返事は、単にお茶を飲みたくないだけで、その誘いを断る意味ではない。勿論「コーヒーもその他の飲み物も飲まない」という意味でもない。
そういうわけで「お茶を飲みたくない」と断られても、「じゃあ、コーヒーはどうですか」と中国人の口から出るのは、中国人は当たり前だと思っているのであろう。
上述の誤解は日本語で「お茶を飲みたくない」の後「じゃあ、コーヒーを飲みに行きませんか」を続けて聞くのは日本ではダメだが、中国ではごく自然なことだと言うことにある。もし日本語の「お茶を飲みに行きませんか」を中国語の「去渇点什么東西吗?」(何かを飲みに行きませんか?)と訳せば誤解を避けることができたと思う。
しかし、「何かを飲みに行きませんか」という言葉は日本語では、「お酒を飲みに行けませんか」という意味も含まれている。だから、お酒を誘いたい時に日本人は「のみに行きませんか?」と言う。「のみに行きませんか?」の前に目的語の「お茶」を付けたら「お酒を飲みに行かない?」ということになる。
もし人と何かを相談したいときには、日本人は「ちょっとお茶でも飲みに行きませんか」あるいは「のみに行きませんか」と言う。その意味は「どこかであなたと相談したいことがある」になる。日本語の「ちょっとお茶でも飲みに行きませんか」と「のみに行きませんか」は中国語の「去渇点什么東西吗?」と訳せるが、意味は必ずしも相談することがあるのではなく、「雑談をしに行きませんか」にもなる。
人間は喉が渇いた時にはガブガブ水を飲む。日本人は喉が渇いたら自動販売機でジュースを買って飲む。喫茶店に入ったときは、コーヒーを一杯飲むだけでおかわりはしない。だから日本人が「お茶を飲みませんか」というのは飲み物を飲むのが目的ではなく、だいたい人と話をしたり、休憩したりするのが目的の場合が多い。
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