中国と日本、言語文化差異
中国のある新聞に載せられていた記事である。ある中国の若い成金が親世代と自称している。みんなの前で堂々と「誰かが俺のことを親父と呼んだら十元払うぜ」と公言したそうである。中国ではこのようなことは全然おかしくないのである。人と喧嘩する時でも自分の事を親父とかおじさんとか自称して、上の世代の快感を愉しみながら相手を侮辱することがある。魯迅の『阿Q正伝』の主人公、阿Qさんが同世代人に殴られた時に、これは「親父がせがれに殴られた」と言って自分を慰めた。
中国人は世代の順序が厳然だから、だれでも自分を世代に応じた呼称で呼ばれることに慣れている。自分のあるべき世代より上の世代の呼称で呼ばれたら名誉に思うし、人から敬意や畏まれを感じることがある。中国人から見れば、お父さん側の叔母さんも、お母さん側の叔父さんも上の世代になるから、たとえ年が自分より下でも、叔母さん絶対叔母さんの尊厳がある。姉は「下」の世代になるから叔母さんの代わりにはなれないのである。
日本人は「上の世代でありながら、下の世代なりたい、呼ばれたいと思う。」この点は中国人の意識と違うと思う。例えば、女子大学生のお兄さんが結婚して子供ができたら、彼女は自然にその子供の叔母さんになる。この場合中国人なら絶対子供に「叔母さん」と呼ばせて、自分の長者の尊厳を示すが、日本人の未婚者は絶対「叔母さん」と呼ばれるのがいやだから、「おねえさん」と呼ばせるだろう。それに世代が違っても、年がとても近い場合も「お兄さん」とか「お姉さん」と呼ぶことが多いようである。
この中日の違いがどうして起こったのか、と言えば、日本語の「おばさん」と「おじさん」は年輩への呼び方だと言う意味もあるし、「お姉さん」は若い人に対しての呼び方だと日本人が思っているからだろう。まだ未婚の女性は年輩だと思われたくないから、たとえ法律上では「叔母さん」であっても、世代が下がってもいいから「お姉さん」になりたいのである。
家族以外の人にも日本人は若い呼び方で呼ばれてほしいのである。外へ出ても「おばさん」、「お祖母さん」、「おばあちゃん」という年寄りくさい言葉で呼ばれるのを嫌う。このような呼び方は中国では大歓迎だが、日本では嫌われている。
日本の敬老の日に、中国のある若者が私の友達にわざわざ電話をかけて、尊敬の意を込め親切に「あばあちゃん」と呼んでお祝いをしたが、友人はその呼び方に大変機嫌が悪かったそうである。彼女はまだ五十代なのである。
日本人は「家庭内呼称」で上下の関係を重要視していないばかりか、自分を「下見」してほしいと思っているから、中国人は日本人に自分より下の「世代」の呼び方で、日本人は中国人に自分より上の「世代」の呼び方をすれば、両方とも喜ぶだろう。

